ケーキの切れない非行少年たちより(宮口幸治)2
前回 少年院の子供たちに学習の土台となる認知トレーニングをしている話をしました。
おそらく、誰もが小学生に入る前や低学年のうちに認知トレーニング、ワーキングメモリーのトレーニングや、具体的には点描写等をしておくことは必要だというお話をしました。
さて 今回は、犯罪を犯す人の脳の状態の話をしていきます。
脳が正常に機能しないための犯罪
日本で2001年に起きた、大阪教育大学池田小学校事件を起こした犯人の脳のMRIには、中脳左外側部に5×10ミリの星細胞腫がありました。また検査で前頭葉の低下が指摘されています。
アメリカ1966年の死亡者17人、負傷者23人をだした。テキサス大学の銃乱射事件の当時25歳の容疑者の脳には胡桃大の悪性腫瘍がありました。それによって暴力的衝動を抑制する能力が阻害された可能性があります。
ほかにも脳の状態が悪く 犯罪に結びつくことがある事例の研究が本にはのっています。
【少年院に入っている子供2300人の約半数が虐待の被害体験があったと法務綜合研究所の調査結果があります。】
おそらく子供の生活環境が悪く 脳へ悪い影響があったことが考えられます。
犯罪者は環境によってつくられることがあります。
残虐者の脳科学研究(友田朋美) こちらの研究では 厳しい体罰や虐待が脳に悪い影響があることが書かれています。
- 脳の前頭葉の委縮
- 暴言による聴覚野の変形
- 親のDVを見聞きすると視覚野の縮小
生まれてからの温かい親子関係がいかに必要なのがわかります。
脳の各部位が変形、委縮、縮小すれば脳のぱほーマンスはおちます。弱い認知能力になるのも当然です。学校生活では周りから理解されない、自身で悪くしていても気づかないの悪循環が続くのも想像できます。
宮口さんの著書には、【刑務所にいる受刑者を一人養うのに、施設運営や人件費を含め年間300万円かかると載っていました。】
【7万人以上を対象とした疫学調査では 精神疾患は児童虐待に起因することがわかっていて、児童虐待をなくすと、物質乱用を50パーセント、うつ病を54パーセント、アルコール依存症を65パーセント、等を減らすことができる。】
友田朋美さんの研究には 2012年度で児童虐待によって生じる年間の損失が年間一兆六千億円にのぼる資産があると載っていました。
子どもの環境をいかにするかで明るい未来が生まれるかがわかります。誰にでも、幸せな人生を自分の力で想像し生み出せる力を持たせてあげるべきだとだれもが思うところではあります。
しかしながら そのような虐待を生み出す環境は連鎖するともいわれています。早期発見
保護が必要ながら 難しいでしょう。
子育て環境に思うこと
昔は地域で子育てをしていました。今は核家族化が進み、保護者の負担が大きくなっています。保護者自身核家族で生まれ兄弟の少ない中育ち、子どもを育てていく現状です。以前は保育園の子供が小学校で落ち着きがなく手がかかるといわれていましたが、今は家に長くいた子供ほど集団生活になじめず手がかかるといわれています。虐待とは違い、しばらくすれば集団に慣れていく程度ですが。しかし、子供を育てる力がなくなってきているといえるのではないでしょうか?
今そしてこれから 日本は人口が減っていきます。資源のない国では人材育成こそが大きな力になると思うのです。 何か良い解決策がないのかと思います。